小麦の値段


FRB史上最低水準に利下げ FF金利「0〜0・25%」へ - MSN産経ニュース


それにしてもほんとに弾ける時はしっかり弾けるものだ。


と、そんな呑気に構えてる場合じゃないのだけれど、かと言って株だ為替だFXだといったことには全く縁遠いので取り立てて何かできることがある訳でもなく、アレコレと考えを巡らしながらも結局傍観するしかできない現状なのだけれど、ここまででかく弾けたとなると1987年のBlackMonady程度どころではないので当然1929年の世界恐慌との比較になるからこれほどのでかい弾け方を実際に体験するのは初めての人たちがほとんどということになる。


そんな中、世界の富を一手に集めて豪奢な暮らしをしてる人々が最も多く存在する国が弾けるとどうなるのかってことを世界中の人が実際に身を以て体験してるのだけれど、11月の米消費者物価指数1.7%下落で過去最大の下げ幅なんてのは物凄くかわいらしい方で、11月の米住宅着工、過去最低の前月比18.9%減あたりで驚き、11月の欧州新車販売26%減米新車販売11月27.3%減あたりで目眩がしてくる感じだ。


そしてとうとう米国債相場は長期債が急伸して1カ月物米財務省短期証券が2日連続でマイナス金利を記録し、FRBがゼロ金利政策を始めた。


巷じゃこういった動きを見てアメリカが日本と同じようなデフレに陥るなんてバカなことを言う人たちが出始める始末で、そりゃあ世界で最もでかい基軸通貨を牛耳ってる一番の経済大国のバブルが弾けて先物指標が軒並み最高値から1/2〜1/3に急落してる世界なんだから当然一時的にはデフレになるに決まっているのだけれど、


1. 大規模にバブルが弾けた
2. 不良化した債券その他を処理するあてがない
3. 国内経済を回すための当座手当てがなんと約7兆ドル
4. 国債の引き受け手が当然いないため国債は国内で調達し消化する
5. 主要な輸出品目は農産物、武器、航空機(および戦争)
6. 元々財政赤字国で輸入超過国


とこんな状況でどうやってデフレになるっていうんだろうか?


アメリカが今やっているのは史上空前規模の国家的バラマキ政策であって、既に世界的に経済状態が酷すぎるから戦争を起こして世界中から戦費をかき集めることすらできないアメリカが農産物の輸出だけでこれをペイすることができる訳もなく、そういった現状に国家予算が3兆ドルという国がとりあえずで7兆ドルの財政支出を決め来年までに年間10兆ドルの超大盤振る舞いを行うのだがそれを担保するものがどこにあるというのだろうか。


となればこれはどこの誰がどう見ても単に輪転機廻せるだけ廻してドルを刷りまくってヘリコプターマネーよろしく降らせているだけの話しで、現状の貨幣経済において通貨の価値を担保するのは信用だけなのだからアメリカがやり始めたのは当然ただのバラマキであって積極的にドルの価値を毀損して薄める行為でしかない。


そうすると誰が考えても解るのだけれど、そんな単純に無闇矢鱈に紙幣を刷りまくってやれ使えほれ使えとやっている国の貨幣を誰が信用するか? というと当然そんな状態の紙幣は刷れば刷るだけ信用が下がっていくことになるのが当然で、その結果としてドルの値打ちが下がってドル安になり、輸入大国であるアメリカでは当然のように物価が上昇していくことになる。


現状においてドルが円以外に対して比較的高値でいられるのは、当初は円キャリートレードのような類いのポジションの手じまいによってドルへの戻しがあったためで、もうひとつはドルが未だに基軸通貨であるためであり、ヨーロッパも今回のバブルの波を大きくかぶっているため世界的な不況になる可能性が高い現在の危機的な状況においてドルが基軸通貨であることに今のところ変わりがないために先行き大きくドルの価値が目減りすることが分かっていてもドルに頼るしかない状況になっているのでかろうじて支えられているだけの危うい体勢になってしまっている。


そしてアメリカのような経済状態に陥ってしまった以上、こうなると今度はデフレこそが最大の敵となる。財政出動の規模がほかに比べることのできないほどの巨大なものである上に輸出によってそれをペイすることができない以上、これをペイしていくにはある程度のインフレを無理矢理にでも持続して負債を圧縮して軽くしてしつつ、インフレによってドルの価値を薄めて場合によってはデノミするなどして日本や中国などの諸外国が大量に持っている国債を半ば踏み倒すに近い形で質的に劣化させるしかない。またはどこかの時期で完全に国家デフォルトを選択するしか方法がない。


でも、アメリカは基軸通貨を持っている国なのでデフォルトする訳にはいかない。よって現状で取れる選択としてはヘリコプター・マネーによるインフレ策しか手がないと判断し、アメリカは積極的に金をばらまくことによって積極的にインフレを引き起こし、他国が買った分を含めて米国債の価値を地面に減り込ませながら、考えられないほど超巨額の財政赤字を高率のインフレによって退治することにして、基軸通貨をどうしていくかはその間の世界的な枠組みに任せるという選択になったのだろう。


インフレにならなければインフレになるまで幾らでも紙幣を刷り、インフレ率が低ければ納得のいくインフレ率になるまで紙幣をすることにしたというのがここまでのアメリカの決定ということになる。


そういった状況を前にして「アメリカは日本と同じようなデフレに陥る」って発言をする人たちは何を根拠にしてそんなことを言ってるんだろうか?


それより、ヨーロッパや中国、ロシア、日本などの世界の国々はこの方針にどう対処するつもりなのかがよく分からない。どこぞの大臣が円高は容認できないので介入するべきだとか言ったらしいけど、アメリカがここまでは腹括って突き進んでる状態に日本だけで対抗できる訳がないのに一体何を考えてるんだろうか? むしろ怖いのは米国債が紙くずになることを恐れてサブプライム問題でそんなに食らってないのを忘れて無理にアメリカとやり合い、道連れになったり踊らされて逆にもっと酷い状態に陥ることの方じゃないだろうか。


いろんな人が現在の状況についていろんなことを言ってるけれど、アメリカは未だに基軸通貨を支配してる国であって、そのアメリカのオバマが1月に就任していきなり「デフォルトしま〜す」とか「デノミさせてもらいま〜す」とか言い出す可能性が全くないとは言えないような現在の状況において、何を言ったところで虚しいだけで現状においては完全に打つ手なしだと思う。


裏で各国が入り乱れて今後の基軸通貨体制やらアメリカの体勢やらについてどういった莫迦試合をしてるのかは全然分からないのだけれど、そういったことまで含めて現時点ではオバマがはっきりアメリカの今後について就任演説やって政権内部の担当者があれこれと中身を明らかにしてくれないうちは世界中のどの国も迂闊に動けないのが現状なんだろう。


だから中国オリンピック開催中にグルジアとロシアが戦争し、北朝鮮経済制裁がいきなり解除になって、ソマリアでは海賊が頻出し、台湾と中国が近づき始めたり韓国が反米的だったりする中で日中韓台で領土問題が出てきて、インドではパキスタンの過激派がテロを行い、プーチンメドベージェフが北方領土の話しを持ち出して、なんて驚くようなことが幾つも当然のように起きてるんだろう。


マスゴミは勝手に政府の意向を汲んで「不景気だとか、不況だとかいうことを露骨に言わない」キャンペーンを張ってるらしいけど、トヨタが1941年以来の赤字を出したとかいう異常な状況の中で不況だと思わない人間の方がむしろどうかしている。国民を安心させたいなら円高を利用するべきなんじゃないだろうか?


日本という国の経済活動の大半は国内の消費活動によるもので、多少は物の売れ行きが悪くなるにしても物というのは必ず壊れていく。特に最近の物はなんでも基盤付きの制御部分を持っているような代物ばかりでメーカーは長年に渡って長持ちするような製品作りをしていないから買い替え需要はそれほど減らない。これは先進国ならどこでも同じような状況になってきている。そして投機による各種資源の高騰は治まってすでに元の状態に戻っておりさらに下落していきそうな勢いになっている。食べる物に眼を移せば少なくとも米は大丈夫で、ほかの食料もほぼ元の値段に戻ってきている。そして円高がこれだけ進んでいるのだから以前と比べてどれだけ輸入関連業者が儲かっていることか。


政府は国民を安心させたかったら、まずは政府が下ろしている小麦の値段を下げることから始めるべきなんじゃないだろうか?